本の紹介や要約はどこから著作権侵害?結論とその根拠

昨今、Youtubeやブログなどで本の紹介をしてくれるコンテンツが増えてきました。
これから自分で読んだ本を発信していきたいと思う方も多いと思います。

そんな方へ向けて、著作権的に何がOKで何がNGか解説していきます。
根拠についても後半で説明します。

結論

一言で答えるとこのようになります。

感想を述べる問題なし [解説]
引用を掲載する5つの条件を守れば問題なし [解説]
表紙を掲載する載せ方による [解説]
タイトルを掲載する一般的に問題なし [解説]
動画で口述する内容による [解説]
要約する表現による [解説]

解説

感想を述べる

感想を述べるのは、あなた自身が表現者(=著作者)となるので全く問題ありません。

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法 第2条 2

引用を掲載する

「公表された著作物は、引用して利用することができる」と法律で定められています。
引用の5条件」を全て満たせば許諾を得ること無く引用することができます。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法 第32条

表紙を掲載する

表紙を掲載するのは載せ方によってOK/NGが変わります。

引用の5条件」を全て満たせば問題ありませんが、表紙のデザイン自体に著作権があるので表紙を前面に出しすぎると「補足的な情報として区別されている」という条件が満たされない可能性があります。

表紙を載せたい場合は以下の方法をおすすめします。

  • 引用の5条件を守って掲載する
  • 著作者の許可を取って掲載する
  • (ブログの場合)Amazonなどの商品リンクを貼る
  • (ブログの場合)Twitterで著作者本人がつぶやいた投稿をサイトに埋め込む

Twitterの埋め込みがなぜOKかというと、Twitterで投稿したコンテンツがあらゆる配信方法で利用されることをユーザー本人が同意しているからです。
画像単体をコピーするのではなくTwitterの埋め込み機能でつぶやきを掲載するのであれば規約に準拠します。

ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社が、既知のものか今後開発されるものかを問わず、あらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンス(サブライセンスを許諾する権利と共に)を当社に対し無償で許諾することになります

Twitterサービス利用規約
著作者の許可を得る前に

表紙の取り扱いは事前に出版社が決めている場合があります。

「著作者の許可を取って掲載する」場合はまず、出版社の公式サイトなどで表紙の掲載可否が記載されていないか確認しましょう。

タイトルを掲載する

表現の幅が少ないネーミングは著作物として認められないため、一般的には掲載しても問題ありません。

著作物は「創作的」に表現したものですので,一般的に,ネーミング,キャッチフレーズ,流行語,単なる記号などについては,そもそも表現の幅におのずと制約があり,誰が表現しても同じようになるものは創作性がありませんので著作権では保護されません。その他,死亡広告,お知らせ欄などの事実の伝達にすぎない雑報等も著作物ではありません。

文化庁>著作権制度に関する情報>登録の手引き

動画で口述する

口述権は著作者の権利なので許諾を得る必要があります。
動画で自分の感想を述べる引用の5条件を守って口述するのであれば問題ありません。

言い回しを変えて口述する場合はグレーで、本の表現を翻案したものであればNG、自分の表現であればOKです。
人によってどちらとも捉えられるようなものは判断が難しいため、専門家への相談をおすすめします。

まとめると以下のパターンで口述できます。

  • 感想を述べる範囲に留める
  • 引用の5条件を守って口述する
  • 翻案ではなく自分の表現にして口述する(専門家への相談を推奨)
  • 著作者に許可を得て口述する

要約する

非常にグレーな利用用途です。

情報自体には著作権がありませんが、表現には著作権があります。
よって、表現を翻案したものはNG、情報を自分で表現したものはOKになります。
表現の仕方によっては翻案だとも自分の表現だとも捉えることができてしまうため、非常にグレーな利用用途になります。

まとめると、以下のパターンであれば問題ありません。

  • 著作者に許可を得て要約する
  • 翻案ではなく自分の表現にする(専門家への相談を推奨)

根拠

具体例を先に解説しましたが、根拠となる法律も記載します。

著作者の権利

著作者は著作物に対してこのような権利を持っています。
(著作権法 第三款 著作権に含まれる権利の種類より)

著作者が持っている権利
  • 複製権
  • 上演権及び演奏権
  • 上映権
  • 公衆送信権等
  • 口述権
  • 展示権
  • 頒布権
  • 譲渡権
  • 貸与権
  • 翻訳権、翻案権等
  • 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

複製公衆送信口述翻案 等の権利は著作者が持っているので、Youtubeやブログで著作物を使用するには原則著作者に許諾を得る必要があります。

引用の5条件

著作者の権利の中にも例外(権利の制限)があり、引用は例外の一つです。
「引用の5条件」を満たす場合に限り、著作者に許諾を得ること無く使用することができます。
一つでも満たさないものがある場合は許諾が必要です。

引用の5条件
  1. 公表されたものである
  2. 補足的な情報として区別されている
  3. 公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内である
  4. 出典を明示している
  5. 引用部分を改変していない

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法 第32条

著作物の利用行為が『引用』との語義から著しく外れるような態様でされている場合、例えば、利用する側の表現と利用される側の著作物とが渾然一体となって全く区別されず、それぞれ別の者により表現されたことを認識し得ないような場合などには、著作権法32条1項の適用を受け得ないと解される。

「沖縄 うりずんの雨」事件 判例

当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

著作権法 第48条

根拠は以上になりますが、著作権について1から理解したいという方はこちらの記事もおすすめです。

ブログを書くにあたって理解すべき「著作権」の全体像

おわりに

Youtubeやブログで本を紹介・要約することを単にOKやNGと理解せず、一つ一つ著作権を守りながら行うことが大切です。

最後に、ここまでの理解を助けてくれた素晴らしい参考書籍を紹介します。

こちらの本は、トレースはいいの?キャッチコピーは流用していいの?本の表紙の引用は?といったクリエイターならではの疑問を分かりやすく正確に解説しています。
ネットで検索しても答えは見つかりますが、関連する知識を体系的に学べる点で本は優れています。
詳しく知りたい方におすすめの一冊です。

著作権法の原文は以下のリンクから確認できます。

著作権の最終目的は「文化の発展に寄与すること」とされています。
私自身、本の良さを伝えてくれるコンテンツに出会ったおかげで苦手だった本を買って読むようになりました。
個人的には、本の紹介は文化の発展に寄与するコンテンツだと思っています。
著作者に敬意を払い、著作権を正しく理解した上でコンテンツが作られることを願っています。