「イラスト、文章、写真は著作物」というのは分かっていても、実際に何が良くて何がだめなのか分からないのは不安ですよね。
詳しく知りたいけどどこから調べればいいか分からない。そんな方に向けて、知識0から理解できるように情報をまとめました。
ブログを書くにあたって理解すべき「著作権」の全体像を解説していきます。
この記事で得られること
- なぜ著作権を理解すべきなのか理解できる [結論]
- 著作権の基礎知識を理解できる [結論]
- イラスト、文章、写真を引用するための明確なルールを理解できる [結論]
- 今使おうとしている著作物の利用可否を判断できる [結論]
そもそも、著作権って何?
著作権とは、著作者が著作物に対して持っている権利のことです。
著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
著作権法 第17条
では「著作物」とは何かというと、文芸/学術/美術/音楽において思想又は感情を創作的に表現したものです。
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
著作権法 第2条 1
ポイントは出来事やアイデア、情報そのものは著作物とは呼ばず、それを創作的に表現したものを著作物と呼ぶ点です。
具体例をあげると以下のようなイメージです。
著作物
- イラスト
- ネットの記事本文
- 写真
著作物でない
- イラストで書こうとしたアイデア自体
- 世の中で起こった事実
- 100%白地など、創造性が全く無い画像
著作者が持っている権利
著作物が何か分かったところで、著作者がどんな権利を持っているか見ていきましょう。
(著作権法 第三款 著作権に含まれる権利の種類より)
- 複製権
- 上演権及び演奏権
- 上映権
- 公衆送信権等
- 口述権
- 展示権
- 頒布権
- 譲渡権
- 貸与権
- 翻訳権、翻案権等
- 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
複製したり公衆に送信したりする行為は著作者だけが権利を持っているので、
ブログを書くにあたってこれらの権利を侵害しないために著作権を理解しておく必要があるのです。
今まで他人の物を勝手にコピーとか印刷したことあるけど、これもだめってこと?
確かにそう思いますよね。
実は著作権には例外(権利の制限)があり、用途によっては著作者の許諾無しに著作物を利用することができます。
次の項目で詳細を見ていきましょう。
例外的な利用
著作者は多くの権利を持っていますが、例外的に自由に使える利用用途が定められています。
以下の場合は著作者の許諾無しで利用することができます。
(著作権法 第五款 著作権の制限より)
- 私的使用のための複製
- 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用
- 引用
- 教科用図書等への掲載
- 試験問題としての複製
- 政治上の演説等の利用
- (他にもたくさんあります)
「私的利用」や「引用」は自由に使える利用用途として定められていることが分かります。
私的利用のためにコピーする。ブログで引用する。これは法的に問題ないのです。
さて、ここでいくつか疑問が湧いてくると思います。
個人ブログは私的利用ってことでいいの?
残念ながら、「誰でも見れる状態にしている」という点で私的利用の範囲に含まれないという見方が強いようです。
そのため複製は法的にNG、引用は法的にOKとなります。
引用なら許可なく自由に使っていいってこと?
はい、引用ならそのとおりです。ブログで自由に引用できます。
この「引用なら」がこの記事の一番のポイントなので、次の項目で説明します。
引用の条件
前項まででイラスト/文章/写真は全て著作物なので著作者から許可を得ないといけないことと、
引用の場合は許諾なしで自由に使えること分かりました。
では、何をもって引用だと言えるのでしょうか。
それは法律と裁判で示された5つの条件があります。
- 公表されたものである
- 補足的な情報として区別されている
- 公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内である
- 出典を明示している
- 引用部分を改変していない
これら全てが当てはまる場合に「引用」と言えます。
具体例を見ていきましょう。
条件を満たしている例
- 無料で公開しているメルマガの引用
- 自分の感想の補足情報としての引用
- 目的に沿った範囲の引用
- 「○○より引用」と記載している
- 一部をそのまま抜粋した引用
NG例
- 個人でやりとりしたメールの引用
- 引用文をメインコンテンツにしている
- 悪質な用途での引用
- 出典元を記載していない
- 一部を自分で修正した引用
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
著作権法 第32条
著作物の利用行為が『引用』との語義から著しく外れるような態様でされている場合、例えば、利用する側の表現と利用される側の著作物とが渾然一体となって全く区別されず、それぞれ別の者により表現されたことを認識し得ないような場合などには、著作権法32条1項の適用を受け得ないと解される。
「沖縄 うりずんの雨」事件 判例
当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
著作権法 第48条
実際の判断の流れ
ここまでの考え方を実用的な側面で簡略化するとこのようになります。
「私的複製」は可能ですので手元に印刷しておけば見やすいかもしれませんね。(A4サイズ)
もちろん引用もOKです。
まとめ
さて、ここまで読み進めた皆様であればかなり理解が深まったかと思いますので
冒頭の「この記事で得られること」をおさらいします。
著作権を理解すべき理由
ブログを書くのに著作権を理解すべき理由は、ブログで著作物を掲載することが私的利用を超えて複製し公衆に送信することだからです。
複製や公衆送信は著作者のみが持つ権利なので、他人の著作物を扱うときは
- 著作者に許諾を得る
- 引用の範囲で利用する
のどちらかを行って権利を侵害しないようにしましょう。
基礎知識おさらい
著作権を理解するための基礎知識を改めてピックアップします。
著作権とは | 著作者が著作物に対して持っている権利のこと |
著作物とは | 文芸/学術/美術/音楽において思想又は感情を創作的に表現したもの |
著作者がもつ権利 | 複製権/公衆送信権等 など |
例外利用 | 私的使用のための複製/引用 など |
引用の5条件 | ・公表されたものである ・補足的な情報として区別されている ・公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内である ・出典を明示している ・引用部分を改変していない |
引用するためのルール
イラスト、文章、写真などを引用するには5つの条件を全て満たしましょう
- 公表されたものである
- 補足的な情報として区別されている
- 公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内である
- 出典を明示している
- 引用部分を改変していない
著作物の利用可否を判断する
今手元にあるものを実際の判断の流れに当てはめて確認してみましょう。
最後に
著作権の最終目的は「文化の発展に寄与すること」とされています。
著作権を正しく理解して、ブロガーも含めたクリエイター同士、敬意を払って作品に向き合っていきたいですね。
最後に、ここまでの理解を助けてくれた素晴らしい参考書籍を紹介します。
こちらの本は、トレースはいいの?キャッチコピーは流用していいの?本の表紙の引用は?といったクリエイターならではの疑問を分かりやすく正確に解説しています。
ネットで検索しても答えは見つかりますが、関連する知識を体系的に学べる点で本は優れています。
詳しく知りたい方におすすめの一冊です。
著作権法の原文は以下のリンクから確認できます。